第一章

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――数日後、両親の密葬を終えた俺は、相続放棄の手続きを叔父に任せ、山口県にある児童養護施設に行くことになった。田園風景の残る小さな町。そこに児童養護施設『ムスカリ』があった。 中舎制の施設には、十八人の子供が生活し。一歳から十八歳までの子供が生活していた。そこで俺はもう一人の鈴木一郎と出会う。 鈴木一郎は拡張型心筋症という病気で、青白い顔をし、児童指導員も保育士も彼には優しく接した。 両親に育児放棄され、この施設に来たらしい。ムスカリで一番の年長者は、十八歳の早川望(はやかわのぞむ)。来年の三月には高校を卒業し、施設を出るらしい。 俺と鈴木一郎は同じ名前だったため、早川に少年A、少年Bとあだ名をつけられ、施設に住んでいた子供達にもそう呼ばれるようになった。 児童指導員や保育士はその呼び方を表面的には注意していたが、陰では俺達のことを同じように呼んでいたらしい。
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