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「陸坊ちゃんの亡くなったお父さんって、あの有名な成瀬グループの御曹司やったらしいんよ」
「…………えっ! そうなん!?」
日本で一、二を争うトップ企業の名前に、千波は飛び上がりそうなほど驚いた。
「そう。せやけど結局亡くなったのを機に籍も抜いたらしいんやけどね。操さんがこっちに帰ってきてからも、陸坊ちゃんは東京で進学して卒業後は成瀬グループの次期社長の秘書勤めて、バリバリ働いてたらしいわ」
「………………」
千波は言葉を失って、祖母の顔をマジマジと眺めた。
こう言ってはなんだが、昼間から浜辺に座ってぼんやりしている陸の姿からは想像もつかない話だった。
圭子がこの話を聞いたら腰を抜かすのではないだろうか。
「……そんなバリバリ働いてたのに、なんでこんな田舎に来たん……」
つい吐息混じりにそう漏らす。
すると祖母は少し周りを気にするように小声になった。
「なんでも操さんの体調が一年ぐらい前から優れへんから、こっちに戻ってきて傍についててあげてるらしいよ」
祖母の言葉に千波はハッとする。
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