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昨日の失言が頭を掠め、申し訳なさのあまり顔がサーッと青冷める。
「す、すみません……」
「ああ、いえ。冗談です、気にしてませんよ」
陸はクスクス笑って首を振った。
千波はゆっくりと陸の顔を見上げる。
「その…実は私、五十嵐さんのこと……お店で会う前から存じ上げてて……」
「え?」
陸は驚いたように笑いを収めた。
「そうなんですか?」
「はい。実はお店から、あの海岸てよく見えるんです。それで、その……半年ぐらい前から、五十嵐さんがよくあそこに来てらしたの、お見かけしていたので……」
「……………」
それを聞き、陸の表情がほんの少し翳りを帯びたように千波は感じた。
言ってはいけなかったのかと一瞬動揺したが、陸はすぐに笑顔に戻り、バツが悪そうに首の後ろを掻いた。
「………そっか、見られてたんですね。……よっぽど暇な奴だと思ったでしょう?」
「いえ、そんな……」
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