五十嵐家

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「え、一人で着付けできるんですか?」 「はい」 「………へぇ、すごいですね。若いのに」 「別にすごくないですよ。私、おばあちゃん子だから…。それにもうそんな若くないですよ」 感心したように陸に見つめられ、千波は照れてそう否定した。   (おばあちゃん子……か) 陸は千波の言葉を心の中で静かに反芻した。 履歴書の家族構成の欄には、祖母の名前しか記入がなかった。 両親や兄弟のことがふと気になったが、立ち入ったことなので聞くことはできなかった。 誰にでも事情というものはある。 「………ああ、そうだ」 陸は我に返って伏せていた目を千波に向けた。 「母の部屋に飾ってもらう花なんですが」 「はい」 「千波さん、近くのフラワー園と提携して届けてもらってるって言ってたじゃないですか。それ、うちともそういう契約してもらえるんですかね」 「あ、大丈夫だと思いますよ」 千波はサラっとそう答えた。 「なんなら私、連絡しましょうか。あそこの園長さんとは顔なじみですから」 「え、いいんですか」 「はい。付き合い長いですし、値切ってきますよ」 そこまで言って千波は慌てて口を噤んだ。  
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