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(うわ、アホやな私。つい貧乏発言が……)
何千円かを値切ったところで、五十嵐家には何の影響もないに決まっているのに。
恥ずかしくて俯いてしまった千波だったが、陸はそんな千波に優しく微笑みかけた。
「それじゃあ、よろしくお願いします」
柔らかい声色に、千波の胸がトクンと甘く高鳴る。
(………この人、ほんまに優しいな……)
正直、名家の人間なんて皆お高くとまっているのかと思ったが、陸は少しもそんな素振りを見せず、使用人でも同じ目線で話してくれる。
だから初枝も、あんな風に砕けて陸と話ができるのだろう。
帰り際、陸は門の所まで千波を送ってくれた。
「それじゃ、明日からよろしくお願いしますね」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
千波は陸に向かって丁寧に頭を下げた。
顔を上げ陸の顔を見た瞬間、千波はどうしても感謝の気持ちを伝えたくなり、勢い込んで口を開いた。
「………あ、あの…っ」
千波の勢いに驚いたのか、陸は少し目を丸くした。
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