五十嵐家

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※※※※※※※ 翌日から千波は五十嵐家のお手伝いとして働き始めた。 お手伝いは千波も入れて五人。 初枝の他に50代の敦子、40代の優子、そして今月末結婚退職する麻里子。 基本は四人でシフトを回すらしく、休みなどは全部自分達で話し合って決めていいとのことだった。 早番は朝から夕方まで、遅番は昼から夜までの勤務。 仕事は主に殆どが掃除らしく、後は料理や買い物、お客様の案内などの雑務らしかった。 「五十嵐家は全部で五人。うち当主一家は、忠臣様、奥様の友美様、息子の大地様」 「はい」 「呼び方はそれぞれ旦那様、奥様、大地坊ちゃま」 「はい」 「で、旦那様の妹の、操様と、息子の陸様」 「はい」 「呼び方はそれぞれ、操様、陸坊ちゃま」 「…………はい」 「まあ陸坊ちゃまは坊ちゃまと呼ばれるのを嫌がられるし、千波ちゃんは同い年らしいから、陸様で」 「わかりました」 答えながら千波は内心ホッとしていた。 さすがに同い年の男性に「坊ちゃま」は気が引ける。 一通り仕事の説明を初枝から受けていたその時、廊下の向こうから歩いてきた敦子が千波に声をかけた。 「千波さん」 「あ、はい」 「陸坊ちゃまが呼んではるわ。お部屋どこかわかる?」 「はい、わかります」 メモ帳を前掛けのポケットにしまい、千波は椅子から立ち上がった。  
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