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翌日から千波は五十嵐家のお手伝いとして働き始めた。
お手伝いは千波も入れて五人。
初枝の他に50代の敦子、40代の優子、そして今月末結婚退職する麻里子。
基本は四人でシフトを回すらしく、休みなどは全部自分達で話し合って決めていいとのことだった。
早番は朝から夕方まで、遅番は昼から夜までの勤務。
仕事は主に殆どが掃除らしく、後は料理や買い物、お客様の案内などの雑務らしかった。
「五十嵐家は全部で五人。うち当主一家は、忠臣様、奥様の友美様、息子の大地様」
「はい」
「呼び方はそれぞれ旦那様、奥様、大地坊ちゃま」
「はい」
「で、旦那様の妹の、操様と、息子の陸様」
「はい」
「呼び方はそれぞれ、操様、陸坊ちゃま」
「…………はい」
「まあ陸坊ちゃまは坊ちゃまと呼ばれるのを嫌がられるし、千波ちゃんは同い年らしいから、陸様で」
「わかりました」
答えながら千波は内心ホッとしていた。
さすがに同い年の男性に「坊ちゃま」は気が引ける。
一通り仕事の説明を初枝から受けていたその時、廊下の向こうから歩いてきた敦子が千波に声をかけた。
「千波さん」
「あ、はい」
「陸坊ちゃまが呼んではるわ。お部屋どこかわかる?」
「はい、わかります」
メモ帳を前掛けのポケットにしまい、千波は椅子から立ち上がった。
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