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翌日の休憩時間、白い彼岸花と生け花用の鋏を持って、千波は陸の部屋へ赴いた。
ノックをすると、「どうぞ」と陸の返事がすぐに返ってきた。
「………失礼します」
千波は遠慮がちにドアを開ける。
陸はよくパソコンを触っているが、今日は珍しくベッドで本を読んでいた。
「あの……昨日言われてた白い彼岸花、持ってきました」
「……ああ、ありがとうございます」
陸は笑ってベッドから下りる。
千波がテーブルの上に新聞紙にくるんだ彼岸花を置くと、陸はパソコンの横に置いていた一輪挿しを持ってきた。
それをテーブルに乗せ、千波の向かいに腰を下ろす。
「ここで、長さ揃えますね」
「はい」
千波が鋏を手にすると、陸は興味深そうにじっと千波の手元を見つめた。
(………う。緊張するな……)
知らず知らず、千波の動悸が早くなる。
黙っていると手元が狂いそうで、千波は話題を模索した。
「あ、あの……」
「はい?」
「昨日あれから……みどり様が何か言ってきたりしませんでしたか?」
ずっと気になっていたことを尋ねると、陸は笑って首を振った。
「大丈夫ですよ。むしろこのまま彼女の足が遠のいてくれたらいいんですが」
「………そう、ですか」
クレームがなかったことに安堵し、千波はホッと息をついた。
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