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いよいよ明日が連休という段になって、ようやく陸に当日のことを切り出された。
「明日のことなんですが……」
「あ、はい」
門の外の掃き掃除をしていた千波は、手を止めて陸に向き直る。
どうやら千波と二人で話がしたかったらしく、千波が外に出るタイミングを計っていたようだ。
「明日、朝から二人を新神戸まで迎えに行って、昼飯を途中で食べてから来るので、到着するのは2時頃になると思います」
「はい」
「その時に千波さんを紹介したいので、千波さんが飲み物を応接間まで運んできてもらえますか」
「わかりました」
淡々と返事をすると、陸はまた申し訳なさそうな顔になった。
「あの……本当にすみません。変なことを頼んでしまって……」
「いえ。大丈夫ですよ」
陸に気を遣わせたくなくて、千波は精一杯明るい笑顔を作った。
「お二人は、お泊りはこちらでされるんですか?」
「え?……いいえ」
陸は少し困ったように眉を下げて笑った。
「気を遣うし遣わせるし、島内のホテルに泊まるそうです。……向こうも初めての泊まりがけの旅行だから、二人で気兼ねなく過ごしたいんじゃないですかね」
「…………そ、そうですか」
千波の顔がサッと熱くなる。
若い男女が気兼ねなくしたいことなんて、一つしかない。
確かにこんな一つ屋根の下に、従兄弟やその家族がいる場所でそんなことをするのは気が引けるだろう。
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