1774人が本棚に入れています
本棚に追加
「彼が成瀬 証。俺の父方の従兄弟で、現在22才」
突然自分を紹介され、まだ呆然としていた証はハッとして慌てて千波に頭を下げた。
「な、成瀬 証です。……よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「で、彼女が橘 柚子さん。証の婚約者で、証とは同級生です」
柚子のほうもぼんやりとしたように千波と証のやりとりを眺めていたが、陸に紹介されて我に返ったように深く腰を折った。
「あ、た、橘 柚子です。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
一通り挨拶が終わると。
「………………」
しばし奇妙な沈黙が流れた。
やがて証が溜息混じりに陸に視線を向ける。
「──── お前、彼女できたって……。お手伝いさんかよ……」
「ええ。何か問題でも?」
「いや、問題はねーけど…。お前って向こうにいた時、ぜってー女子社員に手出さなかったじゃん。……だから自分の職場の女とは付き合わないポリシーでもあんのかと……」
「別にそんなものありませんよ。たまたまです」
「……………」
横でニコニコと作り笑顔で二人の会話を聞いていた千波だったが。
二人のそのやりとりに、深い違和感を覚えた。
何故、陸が年下の従兄弟に敬語を使っているのだろう?
確か陸は証の秘書を勤めていたらしいが、それは数年間のことだったというし、兄弟みたいに過ごした期間のほうがずっと長いはずなのに。
最初のコメントを投稿しよう!