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俺は母さんの意味の分からない言葉に、できる限りの睨みを効かせた。
だが、母さんはいつものように脳天気な顔をしていた。
母さんには睨みは通用しない。
なぜなら、この母は非常にバカだからである。
「どうかした?」
「なんでもない…。で?なんで父さんと一緒なわけ?」
俺は効かないとわかっていても、睨みを続けた。
「父さんもね、海外に誘われてたみたいなのよ。最初は断ってたらしいんだけど、私も行くし、二人で行こうと思ったのよ。」
父さんはカメラマンで色々な国を行き来していた。
以前は、母さんがデザインした服を着たモデルを、父さんが撮影して二人で賞をとっていた。
今思えば、確かに二人は凄い。海外に行くほどの実力はあるみたいだ。
本当なら二人の事を見直していたかも知れない。
だが、俺はそうはいかなかった。
確かに一緒に海外に行く理由は今、母さんはが言った理由も含まれているだろう。
しかし、それだけではないことに、俺は気づいていた。
そして、その理由に怒りを覚えていた。
「それで?」
「えっ…?」
「それだけじゃないだろ。理由は。」
「な…なんのことかしら…。」
母さんはそっぽを向いて冷や汗をかいていた。
やっぱり、俺の思ったとおりだったらしい。
「確かに、今の理由も含まれているだろうな。だか、それだけじゃないはずだぞ。」
「そんなことないわよ!本当にそれだけよ!」
「何年あんた達の息子をやってると思ってるんだ。あんた達の考えることなんて筒抜けなんだよ。」
「ウッ…。」
「どうせ、久しぶりに二人でゆっくり過して、イチャイチャしたい…とでも考えてるんだろ。」
「ギクッ!!」
母さんは汗をかきながら下を向いて俯いてしまった。
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