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参拝を終え神社を出た四人は、すぐ側にあるテーマパークで昼食を取ることにした。
香りをテーマにした施設で、ハーブを使ったフランス料理が食べられるとのことだった。
「え、4時の新幹線ですか?」
二人の帰宅時間を聞いて、千波は思わず店内に掛けられている時計を見上げた。
ここから神戸まで、車でも1時間以上はかかる。
となると、もうあまりゆっくりはできない。
「二人とも明日から仕事や学校がありますからね。……暇なのは俺だけです」
自虐的にそう言い、陸は明るく笑った。
既に食事を終えた証は、腕を組んでじっと陸の顔を見返した。
「お前、仕事どーすんの?」
「そうですね…。少しずつ母の容態も良くなってきてるし、年明けぐらいから就活しようかな」
「伯父さんの秘書、やったらいいのに。誘われたんだろ?」
「ええ、まあ…。でも、政治畑はあんまり興味ないんですよね。……それに、秘書はもう誰かさんので懲り懲りですから」
「………るせーよ」
陸の冗談ぽい口調に、証は軽く苦笑を返した。
仲の良さそうな二人の会話を、横で千波は微笑ましく聞いていた。
もっと二人の上下関係は厳しいものなのかと思ったが、そこはやはり兄弟みたいに育ったというだけあって、敬語以外は普通の兄弟となんら変わりはないようだった。
言葉遣いこそ乱暴だが、証がちゃんと陸を敬っていることもわかる。
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