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証の横で大人しく座っている柚子の姿を見て、千波は切なさで思わずそっと溜息をついた。
こんな二人が、たった一人の女性を愛してしまったというのだから、なんとも世の中は残酷だ。
振られた陸も辛かっただろうが、柚子も相当苦しんだことは想像に難くない。
それを思えば、嘘をついてでも柚子を安心させたかった陸の気持ちも、理解できないではなかった。
食事を終えレストランを出たところで、千波は柚子を振り返った。
「柚子さん、食後に甘いもの食べたくありません?」
「え?」
「ここ、変わったソフトクリームがあるんです」
「ソフトクリーム!? わ、食べたい!」
パッと笑顔になり、柚子は二つ返事でそう答えた。
「……あー、俺はいいや。煙草吸ってくる」
答えて証は、お前はどうする?という風に陸の顔を見た。
陸も笑って首を振る。
「俺も煙草吸ってきます。ソフトクリームはお二人でどうぞ」
「わかりました。……じゃあ、行きましょうか、柚子さん」
「はい」
喫煙所へ向かう二人に背を向けて、千波と柚子は並んで売店へと向かった。
ラベンダーのソフトクリームを注文した柚子は、ご満悦な様子でベンチに腰を下ろした。
横に座った千波に、屈託なく笑いかける。
「ホントは証、ああ見えてすっごくスイーツ好きなんですよ」
「そうなんですか?」
「はい。めちゃくちゃ食べたいくせに、千波さんの前だからカッコつけたんじゃないかな」
そう話す柚子の口調には、証に対する愛情が滲んでいた。
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