季節外れの嵐

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「頼まれた訳でもないのに、僕が勝手に家に押しかけたんです。それで風邪をひいたとしても、僕の責任ですから」 「……………」 「だから謝らないでください。千波さんにそんな風に責任を感じられたら、かえって申し訳ないです」 掠れた声ながら力強くそう言い切られ、千波はそれ以上は何も言うことができなくなってしまった。 ベッドの脇に体温計が置いてあるのを目にし、ゆっくりと陸に向き直る。 「あの……お熱、高いんですか」 尋ねると、陸は小さく首を振った。 「いえ。37.5℃で、微熱です。あとは少し喉が痛む程度で」 「………喉、痛むんですか」 「はい。少しだけ」 「あの。……何か今、飲みたいものありますか?」 「……いえ。今は大丈夫です」 答えながら、徐々に息遣いが荒くなり、言葉も途切れがちになってくる。 早々にここを辞去して、ゆっくり寝かせてあげるのが一番かもしれなかった。 「じゃああの、お昼にまたご飯持ってきます。……おうどんとか、あっさりしたもののほうがいいですよね」 「………うどんか。……いいな」 ポツリと陸が呟いたので、千波は大きく頷いた。 「わかりました! スタミナうどん、作ってきますから! それまではゆっくり寝ててくださいね!」 「………はい。ありがとうございます」 けだるげに、けれどどこか嬉しそうに陸は答えた。 こんな時でも、千波に気を遣わせないように笑顔を絶やさないところはさすがである。 最後にペコリと会釈をして、千波はそそくさと陸の部屋を後にした。  
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