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それにむしろ、こんな日は家に一人でいたくない。
何故なら───。
「…………っ!」
その時、今日一番の強風がガタガタッと激しく家を揺らした。
千波はとっさに耳を押さえてその場にうずくまった。
(………怖い……怖い……おばあちゃん……!)
両耳を塞いで、届くはずのない言葉を心の中で叫ぶ。
こんな日は、家に一人でいたくない。
──── 何故なら、怖くてたまらないから。
子供の頃に震災を経験してから、千波は揺れというものに非常に敏感になってしまった。
地震はもちろん、こんな風に強風で家が揺れることにすら恐怖を感じてしまう。
最近では少しマシになっていたが、子供の頃は台風が来ると、泣きながらずっと祖母にしがみついていた。
古い家だけにガタガタとよく揺れ、こんな日に一人でここにいるぐらいなら、人もたくさんいて頑丈な五十嵐家に行くほうがずっといい。
その時、家の電話がけたたましく鳴り出し、千波はハッと顔を上げた。
慌てて立ち上がり、居間へと戻る。
震える指に力を込めながら、受話器を取った。
「もしもし、江崎です」
『……もしもし、五十嵐ですが』
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