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『………何かあったんですか?』
「え……」
『なんか声が、元気ないですよ』
心配をかけていると悟り、千波は言葉に詰まる。
ギュッと電話のコードを握りしめ、慌てて明るい声を出した。
「別に何もないですよ! 全然元気です!」
『……………』
一拍の沈黙の後、陸は気遣うように言った。
『……それじゃあ、また明日』
「はい」
『風が強いうちは外に出ないで、きちんと戸締まりしてくださいね』
「………はい。ありがとうございます」
お父さんのような言葉に吹き出しそうになりながら、千波は礼を言った。
電話を切ってから、ホッと息をつく。
陸の声を聞いたことで、気持ちは随分と落ち着き始めていた。
(………急に予定空いちゃったなー。こんな天気じゃ病院にも行かれへんし……。久々にゴロゴロするかなー…)
着替えも化粧もしてしまっていたが、この頃寝不足気味だったので本音を言うとあともう少し寝ていたい。
希望を言えば眠っている間に台風が通過して、起きる頃には雨風が少しマシになっていればいいのだが……。
朝食に食べるつもりで出していたヨーグルトを前に、食べようか後にしようか悩んでいたその時だった。
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