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そして、なんだかんだでクリスマス当日───。
この日は、千波の仕事納めの日でもあった。
五十嵐家では毎年、一月二日に地元の有力者を集めた新年会が開かれる。
お手伝いさんは軒並みその日から借り出され、初枝などのベテランになると元日から出勤して仕込みを手伝ったりしているらしい。
千波は祖母が一時帰宅する為に元日は出なくていいと言われたが、二日の新年会は出勤して準備を手伝うことになっていた。
そのかわり、年末はわりと早めに休日を取らせてもらうというのが、五十嵐家のお手伝い事情らしかった。
「お姉ちゃん、もう苺乗せていい?」
「あ、待ってくださいね、今ヘタ取りますから」
昼の3時過ぎ、台所は今晩のパーティーの用意で大騒ぎだった。
コーヒーを淹れようと暖簾をくぐった陸は、仲良くケーキのデコレーションをしている千波と大地の姿を視界に捉えた。
キッチンでは友美と敦子が七面鳥を相手に何やら格闘している。
「………何か手伝いましょうか?」
自分だけが何もしていないことが申し訳なくてそう声をかけたが、すぐに大丈夫だと返事が返ってきた。
むしろ邪魔だから早く出ていけと思われているかもしれないので、陸はすごすごとサイフォンの前に移動した。
それに気付いた千波が慌てて手を拭いて陸の元へと走ってくる。
「私、淹れますよ。すぐにお部屋にお持ちします」
「いや、大丈夫です。これぐらいは自分でしますよ」
「………でも」
「ホントに。千波さんはケーキの続きしてください」
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