忘れ花 2

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「これ、彼岸花ですよね」 「………はい」 「気付いた時、私すっごく嬉しくて」 胸に盆を抱え、千波はほんのりと頬を赤く染めた。 照れたような横顔がチラリと見え、陸の胸がぎゅっと締め付けられる。 千波は陸に背中を向けたまま、ぽつりと呟いた。 「なんだか自分の中で、彼岸花って陸様との思い出みたいに思ってて。もしかしたら、陸様も同じように感じてくれてたのかなー、なんて、勝手に……」 その時、ガタッと陸が椅子から立ち上がる音がしたので、千波は言葉を止めた。 振り返りかけた時にはもう、陸は千波のすぐ後ろに佇んでいた。 「陸さ……」 「簪、少し曲がってる」 小さく笑い、陸はそっと千波の髪に挿してある簪に触れた。   「え、あ、す、すみません!」 陸が曲がった簪をなおしに来てくれたのだと悟り、千波は慌ててドアの方へ向き直った。 カーッと顔が熱くなってくる。 (みっともないなあ、もう。ちゃんと確認したつもりやったのに……) 陸が簪を髪に挿し直してくれている間、恥ずかしさと申し訳なさで千波は強く唇を噛み締めた。  
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