忘れ花 2

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「千波さんは俺の苦しみを取っ払ってくれたのに、俺は千波さんが抱えているもの、全然知らなかったから……」 「………………」 「知っていたら台風の日だって、もっとちゃんと力になれたかもしれないのに…って」 「そ、そんな……」 決して触れられている訳ではないのに、こんなに近くにいるだけで陸の熱が伝わってくるようだった。 千波は陸から目を逸らし、目の前のドアを見つめる。 陸の影が、すっぽりと自分を覆ってしまっていた。 「あの日は……来ていただいただけで、すごく心強かったですよ」 「でも……俺は……嫌だった」 ドアに押し当てていた陸の手が、悔しそうにぎゅっと拳を作った。 千波の心臓が、にわかにざわつき始める。 「千波さんが頼るのは、彼氏じゃなくて、俺がよかった……」 「……………!」 陸の両手が千波の肩を背後からそっと抱き、千波はビクッと体を硬直させた。 直後、陸は千波の左の耳にそっと唇を寄せて囁いた。 「煙草……気が付きましたか」 「………………」  
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