忘れ花 2

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「……………っ」 廊下を曲がったところで、千波は盆を胸に抱えたままヘナヘナとしゃがみ込んだ。 というよりは、足元からくずおれたような感覚。 (……い、今の……何……?) 暴れ回る心臓をギュッと着物の上から押さえ込み、千波はじっと板の廊下を凝視する。 まだ肩に残る、陸の手の強さ。 耳にかかった、吐息混じりの声。 切なげに紡がれた、言葉。 (どういうこと…!? どう解釈したらいい訳…っ!?) 陸の行動、言動の何一つも理解できず。 千波はしばらく冷たい廊下に座り込み、一人頭を抱えて悶絶していた。 ※※※※※※※ 「………………」 ひらり、と捕まえた蝶が手の平から逃げるように。 千波が自分の腕の中から、去ってしまった後。 陸はしばらくぼんやりと、目の前で閉められたドアを見つめていた。 ベッドの上に置きっぱなしだった携帯が鳴ったことを、一拍の後思い出す。 ノロノロとベッドに腰を下ろし、枕元に置いてあった携帯を拾い上げた。 メールの着信ランプが点滅し、開くと証からのメールである。 読んでみると、特に中身のない挨拶のような内容だった。  
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