忘れ花 2

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「…………ただいま戻りました」 ガラガラと引き戸を閉めると同時に、待ち兼ねたように廊下の奥から友美が走ってきた。 恐らく千波の祖母のことを聞き、心配しながら陸の帰りを待っていたのだろう。 「お帰りなさい」 「…………はい」 返事をしてふと友美を見ると、顔が固く強張っている。 「………千波さんのお祖母さん、どうやったの?」 「………え、……あ……」 陸はハッと口元に手を置いた。 よほど自分はひどい顔をしていたらしく、千波の祖母に何かあったのかと友美は勘違いしたらしい。 陸は慌てて笑顔を作った。 「大丈夫でした。一時的に意識がなくなったそうなんですけど、俺達が着いた頃には意識も戻って、千波さんとも少し話ができたようです」 「…………そう」 友美はホーッと肩で大きく息をつく。 「よかったわねぇ…。千波さんも安心してたでしょう?」 「はい」 陸は頷いて、靴を脱いだ。 そのまま自分の部屋に向かおうとすると、友美が少し訝るように陸の顔を見上げてきた。 「陸さん、何かあったん?」 「…………え?」 「なんや物凄い顔色悪いよ」 友美の言葉に、陸はドキリとする。 今はあまり触れてほしくなかっただけに、この時は女性の勘の鋭さに僅かな鬱陶しさを感じてしまった。 「何にもありませんよ」 「……そう? それやったらいいけど……」 「はい」 「あ、ご飯は?」 「今日は食欲がないので。すみませんが遠慮しときます」 これ以上の追及を避けるように、陸はそう言い置いてからサッと自室へと足を向けた。  
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