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翌朝、コーヒーを運んできた千波は、開口一番陸に謝罪を述べた。
「あの、昨日はすみませんでした!」
いきなり謝られ、陸は目を丸くして千波の顔を見つめる。
「え…。何がですか?」
「その……カッとなって、偉そうな口をきいてしまって……」
「………ああ」
そんなことか、と陸は笑顔になって首を振った。
「昨日は僕も悪かったですから。ろくに事情も聞かずに勝手なことを言ってしまって」
「……いえ。陸様には色んなことでご心配をおかけしてるので、本当に申し訳なく思ってます」
悄然と呟いた後、千波はペコリと一度深く頭を下げた。
それからゆっくりと顔を上げる。
「あの……昨日、友達にちゃんと断りました。……合コン行けないって」
「…………あ」
陸は少し心配げに千波の顔を仰いだ。
「角、立ちませんでしたか?」
「はい。少し呆れてましたけど」
昨夜の圭子との電話を思い出し、千波は苦笑する。
「今回は別の友達誘うからって。……そのかわり、物凄い掘り出しものがおっても知らんでーって、言われました」
冗談混じりに明るく笑う千波を見て、陸は内心ホッとする。
この様子を見ている限り、本音は合コンに行きたがっていたということもなさそうだ。
椅子ごとグルッと千波に向き直り、陸は穏やかに微笑みかけた。
「楽しみですね、クリスマス」
そう言うと、千波も嬉しそうに笑顔になって頷いた。
「─────はい」
本音を言えば、千波と二人きりで過ごしたいところではあったが。
この笑顔を見ていると、これでよかったのだと陸はそう感じていた。
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