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出会いは、ふらっと立ち寄った土産物屋。
コーヒーを買った時に対応してくれたのが、千波だった。
その時は感じのいい店員だな、という程度の印象。
ただ店内に花を生けたのがその店員だと知り、今時古風な女性だなと、少しだけ興を引かれた。
けれど二回目は強烈だった。
逢魔が刻に妖しく暮れなずむ海岸で。
千波は一人、途方に暮れたように膝を抱えて座り込んでいた。
その時はまだ、その女性があの店員だとは気付かなくて。
淋しそうな、消え入りそうな儚い背中が何故か自分と重なり……。
気になって海岸へ降りたその瞬間だった。
今まで頼りなく座っていた女性が突如立ち上がり、持っていた花束を海に投げつけてあろうことか『バカヤロー』と叫んだのだ。
呆気に取られて立ちすくんでいると、気配に気付いた女性がハッとしたように自分を振り返り。
………その時、初めてその女性が土産物屋の店員なのだと気が付いた。
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