ゆく年、くる年

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正直自分にできることは千波達の手を煩わせないことだろうと思い、そう言うと。 千波は少し申し訳なさそうな表情を見せた。 その口元に、味見をしたのか生クリームが少しだけついている。 それが妙に可愛くて、陸はクスッと笑みを零した。 「千波さん、口の横クリームついてる」 「………えっ、……あっ」 途端に千波の顔がカーッと真っ赤に染まった。 陸はすぐ横にあったティッシュを一枚手に取る。 指で拭ってそのまま舐めてもよかったのだが、傍に友美達もいたのでさすがにそれは憚られた。 「す、すみません!」 「ん。じっとして」 千波の目線まで屈んで口元をティッシュで拭くと。 千波の顔がますます赤く色付いた。 「………………」 そんな二人を真横で見ていた大地が、明るい声を出した。 「お兄ちゃんとお姉ちゃん、ラブラブやな!」 「……………!」 屈託ない大地の言葉に、その場の空気が一瞬凍り付く。 焦った陸は慌てて身を起こし、パッと千波から離れた。 「そ、そんなんじゃないよ!」 「えー、だってお似合いやん」 頑是なさ故にポンポンと遠慮なく物を言う大地に、さすがにマズイと思ったのか友美がやんわりと口を挟んだ。 「こら、大地。余計なことばっかり言うてないで、手を動かしなさい」 少し厳しい声色を感じ取った大地は、首をすくめて作業を再開させた。 気を使ったように、友美も敦子も陸達に背を向けて料理を始める。 「………………」 チラッと千波に目を向けると、目が合った途端千波はサッと陸から顔を背けてテーブルの方へと戻って行った。 真っ赤に染まったうなじに、白い彼岸花の簪が妙に映えて見えた。  
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