ゆく年、くる年 2

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もしこんな寒い気温の時に玄関なんかで眠ってしまったら、確実に風邪をひいてしまうだろう。 「……………」 迷ったあげく、陸はインターホンを数回押した。 だが案の定、返答はなかった。 (……っ、あー、もう!!) 心の中で叫びながら、陸は門を開けて庭へと入った。 引き戸に手をかけて、ドアを開ける。 予想通りドアに鍵はかかっておらず……。 「………………」 ドアに手をついて立ち尽くす陸の目に飛び込んできたのは。 玄関のかまちに両手で腕枕をし、三和土に下半身を投げ出してスヤスヤと寝息を立てている千波の姿だった。   (………やっぱり……!) 慌てて陸は千波に駆け寄った。 靴はなんとか脱いでいたが、おそらく脱ぎ終わったところで力尽きたらしい。 「千波さん! 起きてください、千波さん!」 「……………」 「こんな所で寝たら風邪引きますから!」 肩を揺すって大声を出すと、千波は小さく呻きながらうっすらと瞼を持ち上げた。  
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