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「……っ、あーもー、ほんっとに世話の焼ける……っ」
とうとう陸は靴を脱ぎ、家の中に上がり込んだ。
千波の元に駆け寄り、ぐるっとその体を抱き起こす。
「千波さん! 布団まで連れてってあげるから! 部屋は2階ですか?」
「………………」
千波はコクンと頷き、その言葉に安心したのか完全に意識を手放してしまったようだった。
陸の腕に、一気にガクンと千波の体重が掛けられる。
(酒癖悪いなぁ…。絶対酒の失敗一回だけじゃねーだろ)
舌打ちしたいのを何とか堪え、陸は千波の膝の下に手を入れた。
ふうっと一度深呼吸し、ゆっくりと立ち上がる。
とにかく落としたり足を踏み外したりして千波に怪我をさせることだけは避けなければ……。
「……………っ」
意識のない人間というのはとかく重いもので、陸の腕にずっしりと千波の重みがのしかかってきた。
陸は慎重に、一歩ずつ階段を上り始める。
その腕の中、千波は微動だにしなかった。
「部屋……ここか?」
2階には二つ部屋があったが、突き当たりの近い部屋のドアを陸はゆっくりと開けた。
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