ゆく年、くる年 2

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幸い部屋の窓から月明かりが差し込んでいて、部屋の内観を把握できる程には明るい。 (………もっと違う形で来たかったよ……) 好きな女性の部屋に初めて来たというのに、こんなにときめかない状況が果たしてあるだろうか。 内心で嘆きつつ、陸は窓の傍のベッドへと歩み寄った。 両手が塞がっていたので、行儀が悪いとは思いつつ陸は足で掛け布団を捲り上げた。 そうしてゆっくりと、千波の体をベッドに横たえさせた。 「……………っ」 ようやく重さと緊張から解放され、陸はぐったりと床に腰をつく。 陸の体から離れたことで寒くなったのか、千波は猫のように体を丸めた。 だが起きる気配はない。 布団を掛けてやろうとした陸は、ふと千波の体に目を留めた。 (………さすがに、コートやマフラーは外してあげなきゃな……) スースーと寝息を立てている千波の首に巻かれたマフラーに、陸はそっと手をかけた。 起こさないように、そろりとそれを解いて引き抜く。 だが、問題はコートだ。 ある程度体を動かさないと、袖を引き抜くことができない。 「………………」 しばらく逡巡していた陸だったが、思い切って千波の体を抱き起こした。  
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