ゆく年、くる年 2

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「………わかってるんですか、千波さん。俺、千波さんのこと好きなんですよ」 「………………」 「そんな男の前で寝たら、襲われますよ」 答えがないとわかっていながら、陸は千波に話し掛けた。 ……いや、わかっているからこそ、口にしたのかもしれない。 陸は髪に触れていた手を、そっと頬へと滑らせた。 酔って赤くなった頬が、月明かりに照らされている。 その確かな熱を肌に感じ、陸はそのまま指を唇へと這わせた。 初めて触れる、唇。 「………………」 そこで陸はハッと我に返り、慌てて千波から手を離した。 その手で口を覆い、横を向く。 (……やべ。……もう帰ろう。変な気おこしそうだ……) なんとか理性を保てている間に早くここを立ち去らなければ、うっかり手を出してしまいそうだ。 はあっと大きく吐息してから、陸はベッドに手を付き立ち上がろうとした。 そこでハタとあることに気付く。 (………待てよ。……俺が帰ってから、誰が鍵閉めるんだ?) 立ち上がりかけていた陸は、ゆっくりと千波の顔を見下ろした。  
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