ゆく年、くる年 2

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千波はこんな状態なので、もちろん鍵を閉めにはこられない。 ということは、陸が家を出た後この家は施錠されていない状態になる。 (………大丈夫、だと思うけど) 平和な街ではあるが、五十嵐家の蔵の鍵は何度か壊されかけたことがあるそうで、泥棒が全くいないという訳ではないようだ。 「………………」 一晩ぐらい、大丈夫だとは思う。 だが、100%何も起こらないという保証もない。 軽いパニックに陥り、陸はガシガシと頭を掻きむしった。 (えーっ、ちょっと待ってくれよ。だからって俺が泊まる訳にはいかないし……) そんなことをしたら、きっと初枝発信で明日には町中の噂になってしまうに違いない。 自分は別に構わないが、千波は肩身の狭い思いをするだろう。 第一、家に帰った時に友美に何を言われるか……。 そこで陸はハッと顔を上げた。 コートのポケットに入れていた携帯を取り出す。 (そうだ、友美さんに聞こう……) はっきり言って今の自分では、正常な判断が下せない。 陸は五十嵐家に電話をかけながら、物音をたてないように部屋の外へ出た。 『はい。五十嵐でございます』 「……もしもし! 友美さんですか? 陸です!」  
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