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勢い込んで言うと、友美は少し驚いたようだった。
『あら、陸さん。どないしたん?』
「それが……」
陸は背後を気にしながら、小声になる。
「実はその、今千波さんの家にいるんですが……」
『あらまあ、そうなの?』
何故か友美は弾んだ声を出した。
『了解です。今夜は帰って来ないんやね?』
「………違います!」
先走る友美の言葉に、陸はカッと噛み付いた。
反射的に大声を出してしまい、慌てて声を潜める。
「そうじゃなくて。千波さん酔いつぶれちゃって、家に着くなり寝ちゃったんです。なんとかベッドまで運んだんですけど、俺が帰ったら鍵開けっ放しになるし、どうしたらいいもんかと……」
『あらあら』
友美は少し笑いを含んだ声で相槌を打った。
『……そうやねぇ。開けっ放しは物騒やしねぇ』
「…………はい」
『鍵かけて出てきたら? ポストに入れとくとかして』
「はあ、でも。鍵の場所が……」
『どうやって入ったの?』
「それは、千波さんが自分で開けて……」
『ほんなら、玄関とかバッグの中とか、コートのポケットとかにあるんやないかしら』
「………もし、見つからなかったら?」
『そりゃあ、やっぱり陸さんが一晩泊まってあげなあかんのと違う? 万が一ってことがあるからねぇ…』
「………………」
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