ゆく年、くる年 2

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「メリークリスマース!!」 大きな掛け声と共に、大地は持っていたクラッカーの紐を引いた。 パーン!と派手な音が部屋中に響き渡り、火薬の独特な匂いが微かに鼻をつく。 メンバーは大地に友美、陸と操、そして千波の5人である。 忠臣はこの時期はいつも忘年会で、毎年数日ずれ込んだ日にパーティーをしていたらしい。 今年は人数も多いので、忠臣抜きでやることに決めたそうだ。 「これ、神戸で買ってきたスパークリングワインやの。テイスティングしてきたんやけど、すっごく美味しかったから」 賑やかなのが楽しいのか、友美は上機嫌で千波にワインを注いでくれた。 「あ、ありがとうございます」 「シャンパンもあるから、沢山飲んでねー」 「…………はい」 答えながら、やはりセレブのクリスマスパーティーは格が違う、と千波は圧倒されていた。 用意されたアルコールは高そうなワインやシャンパン、料理もまるでホテルのビュッフェのように豪華なものばかりである。 七面鳥の丸焼きなんて、外国だけの風習なのだと思っていた。 千波の中での贅沢といえば、デパ地下で買ったローストビーフがせいぜいだった。 この中で千波の手作りのケーキだけが、なんとも庶民くさくて浮いている。  
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