ゆく年、くる年 2

5/40
2082人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「フルーツタルト、実は初挑戦でドキドキしてたんです」 そこでようやく千波は落ち着いたようにフォークを手にした。 大地はとっくに食べ終わってリビングにテレビを見に行っている。 友美と操はおばさん同士会話に花を咲かせていた。 「お正月は、お祖母さんが帰ってくるんですよね?」 「はい。三が日まで外泊許可をいただいたので」 「二日からの出勤は大丈夫なんですか?」 「あ、はい。高松に叔母がいるんですけど、大晦日から来てくれることになってるんです」 そこで千波は嬉しそうに、ニコッと笑顔で陸を見上げた。 「久々にうちが賑やかになりそうで、すごく楽しみなんです」 「………………」 酔って目元を赤くさせながら微笑む千波を見て、陸も同じように嬉しくなり、小さく微笑み返した。   9時を回ったので、千波はそろそろ帰ろうかと腰を上げた。 ケーキ皿を片付けようとして、体がやけにふわふわしていることに気付く。 (………あれぇ。……飲み過ぎちゃった……かな) 体がカーッと熱く、微かに動悸も速い気がした。 「あら、もういいわよ、千波さん」 帰ろうとしている千波に気付き、友美はそう声をかけた。  
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!