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「あとは私が片付けとくから。操さんも手伝ってくれるし、千波さんはもう帰って」
「………でも」
「さっき殆ど洗い物してくれたし。もう充分」
まだ何か言いたげな千波を振り切るように、友美はパッと陸を振り返った。
「陸さん、千波さん送ってあげてくれる? なんや結構酔ってるみたい」
「はい」
元からそのつもりだった陸は、立ち上がって部屋にコートを取りに戻った。
千波は、深々と友美と操に頭を下げる。
「あの。……今年は本当にお世話になりました。来年もどうかよろしくお願いします」
「あらあら、こちらこそ」
千波が畏まって頭を下げたので、友美と操は慌てて姿勢を正した。
千波に倣うように、頭を下げる。
「千波さんみたいに若い人が来てくれて活気づいたし、大地も懐いてるし。ほんまにお世話になりました」
「来年もまた、お部屋に綺麗なお花、生けてね」
優しい二人の言葉に、千波の胸がじーんと熱くなった。
土産物屋をクビになった時は本気でどうしようかと思っていたが。
五十嵐家に勤めることができて本当によかったと。
今年最後の仕事の日に、千波は心からそう思った。
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