ゆく年、くる年 2

6/40
2082人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「あとは私が片付けとくから。操さんも手伝ってくれるし、千波さんはもう帰って」 「………でも」 「さっき殆ど洗い物してくれたし。もう充分」 まだ何か言いたげな千波を振り切るように、友美はパッと陸を振り返った。 「陸さん、千波さん送ってあげてくれる? なんや結構酔ってるみたい」 「はい」 元からそのつもりだった陸は、立ち上がって部屋にコートを取りに戻った。 千波は、深々と友美と操に頭を下げる。 「あの。……今年は本当にお世話になりました。来年もどうかよろしくお願いします」 「あらあら、こちらこそ」 千波が畏まって頭を下げたので、友美と操は慌てて姿勢を正した。 千波に倣うように、頭を下げる。 「千波さんみたいに若い人が来てくれて活気づいたし、大地も懐いてるし。ほんまにお世話になりました」 「来年もまた、お部屋に綺麗なお花、生けてね」 優しい二人の言葉に、千波の胸がじーんと熱くなった。 土産物屋をクビになった時は本気でどうしようかと思っていたが。 五十嵐家に勤めることができて本当によかったと。 今年最後の仕事の日に、千波は心からそう思った。  
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!