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友美の「よいお年を」の声に送られて、千波と陸は並んで玄関を出た。
家を出たことで、千波の緊張の糸がぷつんと切れてしまう。
それと同時に一気に酔いが回ってきた。
ふらっと足をもつれさせると、陸の手がガシッと千波の二の腕を掴んだ。
「………だから言わんこっちゃない」
ゆっくりと顔を上げると、呆れたような陸の瞳とぶつかった。
千波は懸命に足に力を込める。
「………す、すみません」
「大丈夫ですか?」
「………大丈夫れす」
毅然と答えたつもりだったが、陸は心配げに眉をひそめた。
「大丈夫じゃないですよ。呂律回ってないじゃないですか」
「……………」
「何杯ぐらい飲んだんですか」
「………3、4杯」
「嘘ばっかり。俺が見た限り7、8杯は飲んでましたよ」
「……………」
ボーッとしている千波を見て、陸はヤレヤレと溜息をつく。
「どうしますか? またおんぶしましょうか?」
「……………!」
バッと千波は顔を上げ、ブンブンと首を横に振った。
「大丈夫れす! 歩けます!」
「………ホントに?」
「────はい……」
首を振ったことで目が回り、千波はとっさに陸にしがみつく。
陸は慌てて千波の体を支えた。
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