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「ちょっ、ホントに大丈夫ですか?」
「はい、でも……」
朦朧としながら、千波はぼんやりと陸を見上げた。
酔っているせいだとわかっていても、熱っぽく潤んだ瞳で見つめられて、陸はドキッと胸を弾ませてしまった。
「歩く時、支えててもらっても、いいれすか……」
「……………」
申し訳なさそうに言われ、陸は苦笑しながら頷いた。
千波の腕を掴み、覚束ない足元に気をつけつつ門を潜る。
酔って火照った頬に、12月の風は容赦なく冷たい。
だが千波の体が密着しているせいか、その部分だけはやたらに温かく感じた。
ヨロヨロと歩きながら、千波は何度もガクンと足を折った。
その度に陸は怪我をさせやしないかとヒヤリとする。
「………キャパはわかってるって言ったのに。全然オーバーしてるじゃないですか」
「………すみません……」
少し非難を込めた声で言うと、千波はぼんやりした口調で謝った。
こんなところを見ると、合コンなんかに行かせないでよかったとつくづく思う。
合コンに行ったことがないと言っていたので、場の空気も掴めない間に男に勧められるまましたたかに酔わされたあげく、お持ち帰りでもされてしまったら取り返しのつかないところだ。
陸だからと安心しているせいもあるのかもしれないが、恋人でもない男の前でこんなに無防備に酔った姿を見せる千波に、ほんの少し苛立ちを覚えた。
「すごく……楽しかったんれす……」
そんな陸の気持ちを知ってか知らずか、千波がポツリと呟いた。
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