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「え?」
「いつもご飯は一人れ食べるから……久々に賑やかれ、めちゃくちゃ楽しくて……」
「……………」
「せやから少し……調子に乗って、飲みすぎたみたいれす……ごめんなさい……」
回らない呂律で嬉しそうにそう言われ、陸はすっかり毒気を抜かれてしまった。
確かにパーティーの最中、今まで見たこともないほど千波は楽しそうだった。
いや、パーティーの最中だけではなく、今日一日ご機嫌だった。
(………まあ、仕方ないか……)
そんな千波の様子を思い出した陸は、これ以上千波を怒る気にはなれなかった。
門の前まで来ると、千波は門扉に掴まりながら陸から離れた。
向かい合い、陸に深々とお辞儀をする。
「……ろーも、ありがとうございまひた……」
「いえ」
ますますヤバくなった呂律に吹き出しそうになりながら、陸は答えた。
千波はのろのろと陸を見上げる。
「今年はホンマに、お世話になりまひた…。陸様には、めちゃくちゃ、感謝してまふ…」
「いえ。こちらこそ、お世話になりました」
「来年もよろひくお願いしまふ…」
「はい。よろしくお願いします」
(………多分この一連の挨拶、覚えてないんだろーな……)
苦笑しながら、陸は千波の挨拶に付き合って頭を下げた。
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