父さんの姿

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「ありがとう。 ほんとうに、ありがとう。」 「もういいよ。 まだまだ、術がうまくいったかはわからないんだ。」 グラクス先生が父さんの手にすがり着くようにして礼を言っている。 声がしめっているのは聞き間違えではないだろう。 プロフェッサー・Kという人の出張に同行していたそうで帰ってから知って駆けつけたそうだ。 「エ…いや、藤城がやってくれたなら大丈夫だ。」 「どっちで呼んでもいいよ。 ところでフロラインにはまだしらせてないのか?」 「ああ、あれに言うと大騒ぎになる。 とにかく、由岐くんのことは私もなんとかなるように全力でやるから。」 父さんはグラクス先生の家族とも親しくしているようで、先生の答えに苦笑した後、表情をあらため言う。 「すまんな。」 「何言ってるんだ!当然だよ。」 そして、ボクの方を向いてグラクス先生が何か言おうとするのにボクは先に言う。 「ごめんなさい。グラクス先生。」 「え?」 「だって、リチャードはボクをかばって。」 「ああ、リチャード、あいつは役目を果たしただけだよ。」 「え?」 「おい!」 父さんとボクの声がかさなる。 「すまん。」 先生はそう父さんに言った後、 「いずれは、由岐くんにも説明できるようになるんだけど、今は待ってくれないかな? いいかい?由岐くんは自分を投げ捨ててまで藤城を呼んでくれた…罰則のことは聞いているよね?」 「はい。」 「だから、あいつのオヤジとして言わせてくれないかな? ありがとう。 あいつを助けてくれて…。」
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