人並みの技術と天才の馬鹿

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 俺ことシンス=アルベルトは、自分で言うのもなんだが「大した人間」とは言い難い。 この世界の人口とかには詳しくないが、俺みたいなやつはそれこそ百万を越えるほどいるかもしれない。 強さの基準とも言える魔力量は同年代の平均をやや下回る程度で、使える魔法は平均よりも少し少ない四種、運動能力は平均と比べるとごくごく少し高いだけだ。  「取り柄は?」などと訪ねられると少し迷うが、腕っ節が強いことぐらいだろう。  他に特徴はというと、親が街に二つしかない武器屋を営んでいることだろうか。 消耗品である武器を魔物を狩るギルドの傭兵達に売るのが基本的な仕事内容で、なかなか繁盛している方だと思うが贅沢出来るほど儲かっているとは言えない。 まぁ、週に一回は外食に行ける程度の余裕はあるので貧乏とは言い難い程度の裕福具合である。  そんな普通な俺に、何かの間違いが起きたようだ。 「母さん、これ、何、俺、悪戯、判断」  昼寝を終えて、夕方に差し掛かろうとしている時刻、俺と同じく眠たそうな顔をしている母さんが俺に手紙を渡す。 「何って……見たら分かるでしょ? 国からの命令状」  俺が片言で話していることを軽くスルーした母は、おかしなことが何もないかのような顔をしながら俺の問いに答える。  命令の内容は「シンス=アルベルトを王都にある国立学校に通わせること」つまり俺の進路を勝手に変更して、親里から離れた大都会に行けといっているのだ。 「えっ?俺って選ばれし勇者様系なの?」 「は?」 「じゃあ、実は失われた王家の血を引くとか……」 「しないよ」 「そうか、俺には隠された魔力と属性が……!」 「小説の読みすぎね、そんなのあるわけないじゃない。 どんな理由にせよ、国立の学校に特待生として入れるなんてすごいじゃない。エリート街道まっしぐらよ」  何故か自分のペースを全く崩さない母に呆れながら手紙をよく見る。 「あの……母さん?いや、お母様、母上、これおかしくないですか? なんか、国の騎士って人が迎えにくるの明日なんすけど!?」
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