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「まぁ、んなウジウジ悩むのも男らしくないよな……」
今はどうにもならないことだが、いつかなんとかなるだろ。たぶん。
日課の素振りでもするかな。
昔、近所のおっさんからもらった木刀というには不恰好な妙に重い木の棒で空気を切り裂いていく。
ーーお前、剣のさいのーねーな。
俺が剣士を目指していたときに、ししょーはそう言っていた。
理解はしているし諦めている。
俺には才能がない。
ある程度筋力は付いた。だがそれだけで、剣筋ってやつは理解すら出来ないし、剣速も普通だし、何より魔術による身体強化が出来ないから、普通に速さも力も技術も出来るやつには勝てない。
まぁ、そんときは魔法でも使えばいいんだよな。
ーーお前、魔法のさいのーねーな。
またしても、ししょーの言葉を思い出す。
俺が心機一転して魔法使いとしての道を志そうとしているときに言われた言葉だ。
魔力の絶対量は低いし、魔力のコントロールも下手だし、使える魔法の種類も少ないし、魔術も魔導も使えない。
一応……属性だけは人並みに二つもあるけど……。
魔法でも剣でも勝てない相手でも体術で勝てばいいんだよ。
ーーお前、運動のさいのーねーな。
またかよ、またかよ、またなのかよ……!
再び、ししょーに歯に衣着せぬ言い方で告げられたことを思いだす。
いや、才能ないって言ってもししょー基準だからだろ!
実際、圧倒的に有利な状況とは言えナツキたんには勝てたし!
てか、何かしら勝てる部分があれば充分じゃん!ナンバーワンよりオンリーワンじゃん!それって素敵やん?
ーーお前、色々とさいのーねーな。
もはやざっくりとした台詞で、悪口にしか思えないほどひどい言い草の言葉。
まぁ、俺にはあんま才能ないけどな。
ーーまぁ、お前は運がいいし、根性あるから問題なく、俺を越えれるはずだ。
お前の運と根性と顔だけなら認めてるしさ。
……ふむ、昔の思い出に浸るのはいい加減やめとくか。
色々不安はあるが、なんとかなるだろ。
「今日もいい日だ」
まだ朝早いが、断言してやる。
今日もいい日だ。
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