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身体をほぐす程度で素振りを終えた俺は次は魔法の練習にかかる。
「火よ、灯れ【ファイア】」
呪文と呼ばれる魔法を発動するための言葉とその魔法のトリガー、引き金になる魔法名を発する。
今の場合ならば使用する属性を示す「火よ」とその属性がどうするかを表す「灯れ」という二つの言葉によって構成された「火よ、灯れ」が呪文に当たり、魔法名である【ファイア】が引き金となって魔法が発動する。
この魔法の効果は極々単純、手から火が出るというものだ。
込めた魔力も少なければ魔法の練度が低いので、燃え移らなければ大して危険でもない火が俺の手の平の上でゆらゆらと揺れる。
あくまで、魔法という本物の火とは違う、火に近い性質を持つ魔力なので、この火の魔力の持ち主である俺の手を焼くことも焦がすこともない。
「……綺麗な、火」
俺の脆弱な魔法をそう評したのは、無表情ながらほんの少しだけ眠そうな顔であるかもしれないように見えなくもない少女だった。
「おお、おはよう、なっつん。
綺麗って、まぁ火は光ってるからだいたい綺麗だけどさ」
詩的なロリっ子も素敵だが、ありふれた火を褒めるのはなぁ。
「……使いの、方。たぶん、そろそろ」
「マジすか。なら早く飯食わないとな」
何故そろそろくるのかを知ってるのかは少し気になるが、まぁ大した理由でもないだろう。
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