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「はい、息子をよろしくお願いします」
そう言いながら騎士さんにぺこりと頭を下げる母上の姿は、普通の母親っぽかった。いつもこうしていてくれたらいいのに。
「はい!私が責任を持って送り届けます!」
「あー、マミー、あっち着いたらまた連絡するッスから。
連休とかにも暇があれば戻ってくるッスわ」
特に涙があったり、感動したりするような旅立ちでも別れでもない人並みの状況だけど、今生の別れって訳でもないし、こんなもんだろ。
「……えっと……えっと……一日ありがとうございました」
何か言わなければいけない空気だと思ったらしいナツキたんが軽くテンパりながら母に礼を述べる。
「んじゃ、シンス。
行ってらっしゃい」
父上は仕事のためいないので、ママのみの見送りとなるが仕方ないか。
軽くマムに手を振り、家の外へと出た。
「そーいや、騎士さーん」
俺、何も知らないことを思い出したので、何か知ってそうな騎士さんに色々と質問することにする。
騎士さんがこちらを向いたことを確認したので、質問を開始する。
「ここからどうやって行くんですか?都まで」
「ああ、あっちの方にある宿に馬車を停めさせてもらっているからそれで王都まで行くんだ!
途中二つの街に泊まるつもりだが」
徒歩じゃないのか、よかったよかった。
あっちの方の宿か、結構遠い所の宿だな。
「ナツキたん、まだ三十分ぐらい歩くことになるみたいだし、荷物持つッスよ」
「……ありがと」
身体の大きさから考えてかなり大きく重そうなカバンを持っているナツキたんを心配して持つと言ったが、首を横に振られて断られてしまった。
断るんならお礼もいらんだろ。
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