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カイトは特に何も言わずに俺に剣、いや違うな刀を投げ渡してきた。
「ん、これ……なんすか?餞別?」
そのまま何か言うわけでもなく、走り去って行った。
なんだよあれ。なにかあったのか?
「まぁいいか」そんな風に結論付ける。いつもキャラがブレブレな奴だし、時々人見知りもするからナツキたんと騎士さんがいる今の場面なら恥ずかしがって何て珍しいことでもないしな。
投げ渡された刀は、刀身が150cmはありそうな程に長く、野太刀、大太刀などと呼ばれる類の武器であることが分かる。
「にしても……柄も付いてなくて茎が丸出しって。研いでもないし、鞘もなくて布で巻いてあるだけだし。
それに造りかけって感じでもないよな……」
これじゃあ、ただの鉄の棒じゃん。
まぁ親父に武器もらうの忘れてたからありがたいっちゃありがたいけどさ。
「知り合いか?」
「あっ、はい。餞別かなにかよく分からないけどなんかもらったっぽいっす」
騎士さんは俺の手の中にある野太刀擬きが気になったのか顔を近づけて覗き込んできた。
「魔法がかかっているな、あやふやで中途半端にしかかかっていないから何の魔法なのかはよく分からないがな!」
思いっきり造りかけだけど魔武器なのか。珍しいものをくれるものだな。
魔武器というのは武器に魔法がかかっているもの、魔法によって生み出された武器、魔法によって武器として使用出来るようになった物の総称で、それを造ることは非常に困難な為、貴重品である。
俺の場合、一応武器屋の倅なので普通に見ることはあるが、触ったことはなかなかない。
見たことがある魔武器といえば炎が出る剣や、切れ味が強化された刀とかそんな感じのものが多い。
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