人並みの技術と天才の馬鹿

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 シエンを連れて、ぼーっと街並みを見ながらゆっくりと歩く。 いつも通りに街は活気に溢れていて、人は色んな歩調で俺を追い越して行く者や、俺よりもゆっくりと歩いている者、たくさんの人が行き交いしている。  今まではうるさくて好きではなかったこの光景も明日出て行ってしまう我が身にとっては残り僅かな故郷と云うものである。 別段街並みが変わったわけでもなく、人が入れ替わったわけでもないのに、少し違って見える。  こうして考えると、俺はもしかしたらこの街が好きだったのかもしれない……ということもない。 うん。別に全然好きじゃねーわ。 友達少ないし、彼女もいないしさ。  そんなどうでもいい故郷のことよりも明日から向かう王都のことだ。 きっと可愛い子とかいるんだろうな。  寮とはいえ一人暮らしになるのだから、彼女とか作れば自分の部屋に連れ込むことも出来る。 小学生のちっちゃい女の子を連れ込んだりとかも出来る訳だ。 こう考えると最高じゃん。王都最高じゃん。  輝かしい未来に思いを馳せていると、目的地であるギルドにまで辿りついた。 ギルドの中は血なまぐささを感じる鉄の匂いと酒の匂い、それに外にまで響く喧騒、そしてダンディなおっさんやデブなおっさん、妙なローブを着たおっさんに頭の悪そうなおっさん、禿げたおっさんとガタイのいいおっさんなどなど、おっさんのオンパレードが広がっていた。 「おぅぇ……いつ来ても気持ち悪い」  おっさん好きという珍しい性癖を持っているわけでもなく、普通のちっちゃい女の子が大好きで仕方ない男である俺にはこの匂いと光景だけで吐き気を感じる。 たぶんこの光景の一部と化してるおっさんはホモなのだろう。むしろホモでなくてはこのちっちゃい女の子の一人もいないおっさんまみれの状況は耐えられないだろう。ソースは俺、こんなキモいの無理。
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