コピーとスパイ

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フリーマーケットが開催されている会場は、大きな公園の敷地内にある――何のためにあるのか分からないアスファルトで整備された円形状の土地で、こんなにどこから湧いてきたんだと思うほどの沢山の人間で埋め尽くされていた。 出店している側の人間も、買い物にきている側の人間も、楽しそうに賑わっていて、たまにはこういう所に来るのもいいもんだなと思った。 「あれ? 何か探し物ですか?」 川崎さんが、落ち着かない様子で周囲を見回している。 「あ、いや、何でもないよ」 「……そうですか?」 何でもないようには見えないけれど、川崎さんがそう言うなら、そういう事にしておくか、と私も周囲に目をやった。 すると、やたら混雑しているブースの付近で、知った顔を見つけた。 「おや? あれって葉山君とこのデザイナーじゃないの?」 どうやら、川崎さんも気付いたようだ。 私たちが見つけたのは坂井だった。
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