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声の主は水野さんだった。
水野さんは、セミロングの髪をしっかりと縦に巻いている。
服装は、ベージュとブラウンを基調とした、ナチュラルワンピに、ケーブルニットのスヌード。大人かわいいコーデだ。
お洒落をしたんだな、と一目で分かる。
振り返った坂井と目が合った。
「こんにちは。
こんなところで会うなんて、奇遇だね」
「あれ、工場長?
えぇ?
もしかして、デートですかぁ?」
水野さんは、私と川崎さんを交互に見ながら、陽気な声をあげた。
私は、このわざとらしさが見え見えの高い声が好きじゃない。
「違うわよ」
すかさず言うと、思ったより刺のある言い方になってしまった。
だって私は、川崎さんの家がどこにあるのかさえも知らないのだ。休日に出会ったのだって、今日が初めてだというのに、これがデートと言えるのかどうかも分からない。
「そう言うあなた達は……?」
「俺達はデートですよ」
坂井が淡々とした口調で答えた。
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