コピーとスパイ

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「あぁ……、そうなの」 ニコリと微笑んだ坂井に、私もニコリと返したけれど――。 こっの、大ウソつきっ! 彼氏のいる女の子に手を出すほど腐ってないんじゃなかったっけ!? 腐りまくってるじゃない! ――生理的にイライラする。 「あ、そうだ。葉山部長も見て下さいよぉ! このお店、私のお気に入りなんですぅ」 水野さんが私に腕をからめてきた。 あぁ、フリーマーケットって単語。 水野さんだったわ。 と、ふと思い出した。 水野さんが指差したのは、人だかりが出来ているブースだった。 ブースは沢山あるけれど、リサイクル品を地べたに並べているブースばかりの中で、そこは陳列棚やハンガーラックを置いて、まるで普通の店舗のように商品を並べている。しかも、簡素なテントだけれど、それを立てているから、余計に“お店”という意識を植えつけられてしまうのだろう。 品数も多いし、どっかの業者かしら、と思いながら、テント内に足を踏み入れた時だった。
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