コピーとスパイ

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「ごめん。ちょっとどいて」 私は水野さんを押し退けた。 奥の方に、段ボール箱のまま陳列している下着があったのだ。 「あ、もう気付きましたぁ?」 ふふっと水野さんが笑った。 あぁ、そういえば……。 ウェールズのショーツが売ってたとか言ってたっけ。 と、今頃になって忘れていた話を全て思い出した。 私は、ブラックカラーのショーツを手に取った。 それはフロント部のリボンやら、ヒップ部のレース、はたまた縫い方まで、どう見てもウェールズの製品にしか見えないのだ。 しかも、サイズはS、M、Lと段ボール箱別に分けられていて、数はおそらく各50枚ほどある。 どうなってんのよ。 何でこんなに沢山……? 確か、中古じゃないのかと言われて、水野さんは新品だと言い切っていたけれど。 確かに――。 生地の見た目、肌触り、匂い。 長年の勘が、これを中古だとは認めない。 「部長ぉ。ここにもありますよ」
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