コピーとスパイ

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そう言った水野さんの声に振り返ってみれば、そこにはまた別のウェールズのショーツが2種類陳列されている。 淡いグリーンのショーツは、ローライズパンツを安心して着用出来るようにとデザインされた股上の浅いヒップハング。 ピンクのショーツは、お尻全体を包み込むオーソドックスなフルバックだ。 「水野さん。これってウェールズのショーツだと思う?」 私が水野さんにそう訊いたのは、この3種類のショーツには、共通してラベルが無かったからだ。本物のウェールズ製品なら、サイズと品質表示が記されているラベルには、ウェールズの名前が入っている。 「えぇっ、違うんですかぁ? 部長が分からないなら、私にも分かりませんよぉ」 コイツ……っ! ぷうっと頬っぺたを膨らませた水野さんに、やっぱりイラッとしたけれど。 ウェールズは私の担当な訳だし。 端から、水野さんに頼るつもりはない。 ――にしても。
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