年の始めのためしとて

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新しい年が明けた。 と言っても、特に何が変わる訳でもなく。 お節をぼちぼちつまみながら、千波はこたつに入ってぼんやりとテレビを眺めていた。 正月の昼のテレビ番組は、何故こんなにつまらないのだろう。 「千波」 「………んー?」 祖母に声をかけられ、千波はけだるげに返事をした。 「あんた今日はえらいゆっくりしてるけど。伊弉諾さんにはいつ行くの」 「…………え」 千波はテレビから、ゆっくりと祖母に視線を移す。 伊弉諾さんとは伊弉諾神宮のことで、毎年元日は昼から良平とお参りに行っていた。 昼を過ぎたというのに、出掛ける用意もせずにダラダラしている千波を不思議に思ったらしい。 良平のことは、色々聞かれると面倒なので祖母には何も話していなかった。 「……ん~。どーしよっかなぁ。寒いし、行くのやめよっかなぁ」 「何言うてんの。あんた明日から仕事やないの。今日行かんかったらいつ行くんよ」 祖母は呆れたように千波を見返す。 「破魔矢かって去年の納めて新しいの買ってきてもらわなあかんし」 「……………」 横で叔母の寿満子がハラハラした様子で二人のやり取りを見守っていた。 千波の態度から何かを感じ取ったらしいが、口を挟むのは躊躇っているようだ。 「………わかった。今から行くよ」 口答えするのもめんどくさいので、千波はのそのそとこたつから這い出た。 明日から仕事だったので今日一日はゆっくりしたいのが本音だったが、祖母からあれこれ詮索されるよりはマシだと考え、千波は仕方なく出掛けることにした。  
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