君を守りたい

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コーヒーを飲もうと台所へ入った陸は、ダイニングテーブルに座って何やら書き物をしていた友美と鉢合わせた。 陸の姿を見た友美は顔を上げて笑顔になる。 「あら陸さん。コーヒー?」 「はい」 「………ふふっ」 可笑しそうに吹き出した友美を、陸は怪訝に見つめる。 「なんですか?」 「ここ一月、煙草とコーヒーの量、増えたんちがう?」 「………そう、ですか?」 「って、千波さんが心配してた」 「………………」 思わず言葉に詰まる陸に向かって、友美は意味ありげにニッと笑った。 「何かイライラすることでもあった?」 「…………別に、何も」 またあれこれ詮索されそうでどうごまかそうかと思案した、その時。 ミシッ…、と何かが軋むような音に気付き、二人はふと言葉を止めた。 直後、食器棚の中の食器が小さな摩擦音を鳴らしたかと思うと、すぐにガタガタッと足元が揺れ始めた。 「………嫌や、地震?」 テーブルに掴まりながら、友美は不安げに天井を見上げる。 陸はとっさに横にあった冷蔵庫を押さえたが、揺れはすぐに収まった。 二人は目を見交わせ、同時に安堵したように息をついた。 「結構揺れたわねぇ…。小さい地震でも、やっぱり未だにドキッとするわ……」 胸を押さえながら話す友美を見て、陸はハッと息を飲む。 「─────千波さんは!?」 「え?」 「千波さんは今どこにいるんですか!?」 「………あ。……今は、蔵に……」 友美が全て言い終わる前に、陸は台所を飛び出していた。  
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