君を守りたい

13/22
前へ
/40ページ
次へ
「死にたかったなんて、間違っても言わないでほしいし、思わないでください」 「………………」 「少なくとも、俺は千波さんに会えて人生が変わったから」 涙を含んだ震えがちの陸の言葉を聞いて、ずっと強張っていた千波の肩からゆっくりと力が抜けていった。   「千波さんに会えなければ、俺はまだここで一人で殻に閉じこもったままだったはずです。千波さんと出会えてよかったって、心からそう思ってるんです」 「…………陸様」 「だから、そんな風にだけは……」 そこでとうとう言葉に詰まり、陸は深く頭を垂れた。 これ以上しゃべると、涙が零れそうで。 けれど何とかして、千波のその考えを払拭してやりたくて。 (………守ってあげたい……) 陸は今、強くそう思った。 千波自身、瓦礫の下に二日間閉じ込められ、大怪我を負い。 今までの生活が全て壊れ、慣れ親しんだ土地を離れざるを得なくなって。 孤独と深い心の傷を負った中、一人生き残ったことの罪悪感までを背負って生きていくなんて、残酷すぎる……。 「……………っ」 この深い傷を、少しでも癒してあげたい。 千波の支えになってあげたい。 ………そう思う気持ちに、よそ者とか、震災を経験していないとか、絶対に関係ない。 今間違いなくこうやって、二人は一緒にいるのだから。 何故か陸が涙を堪えているのを見て、逆に千波は少しずつ落ち着きを取り戻し始めたようだった。 何度か鼻を啜って、言葉もなくただじっと陸の顔を見つめている。 陸はそっと千波の頬に触れ、両手の親指でゆっくりと涙を拭った。 陸の優しい眼差しとその手の温かさに、千波の心は少しずつ凪いでいく。 千波が目を上げて陸の顔を見つめると、陸は微笑みながら大きく頷いた。  
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2192人が本棚に入れています
本棚に追加